「親が家の中で転んだ」と聞くと、皆さんはどう感じますか?
「ケガはしたけれど、きっと大丈夫だろう」と思っていませんか?
実は、高齢者にとって「家の中で転ぶこと」は、単なるケガでは済まない可能性が高いのです。今日は、なぜ家の中での転倒が怖いのか、その現実と私たちができることについてお話しします。

1. どこで、どんな風に転ぶの?
データを見ると、高齢者の転倒事故が最も多い場所は、意外にも私たちが一番安心しているはずの「自分の部屋(居室・寝室)」です。
家庭内における高齢者の「ころぶ」事故による救急搬送者数(2020年)
| 順位 | 場所 | 搬送者数(人) |
| 1 | 居室・寝室 | 22,494 |
| 2 | 玄関・勝手口等 | 3,078 |
| 3 | 廊下・縁側・通路 | 2,237 |
| 4 | トイレ・洗面所 | 976 |
| 5 | 台所・調理場・ダイニング・食堂 | 874 |
※東京消防庁管内における救急搬送が対象です。
※本図表では救急搬送データにおける「落ちる」事故は含みません。
※出典:東京消防庁ウェブサイト「救急搬送データからみる高齢者の事故~日常生活での高齢者の事故を防ぐために~」を基に損害保険料率算出機構作成。
具体的には、床に置いた物やドアの敷居につまずいたり、カーペットや電気のコードに足を引っかけたりして転倒しています。
2. 元介護士として見てきた「現実」
私はこれまで訪問介護の仕事をしてきましたが、自宅での転倒がきっかけで入院することになった方がとても多かったのです。
中には、私が訪問したときに転倒したまま身動きが取れなくなっており、急いで救急車を呼んだという経験もあります。
悲しいことに、骨折で入院したあとにそのまま亡くなられた方もいました。(新米の頃は「なぜ骨折で?」とショックを受けましたが、現場では決して珍しいことではないのです……)
退院できたとしても、以前のように元気に動ける方は少なく、多くの人が「今までできていたことが困難になる」という、QOL(生活の質)の低下を経験しています。
だからこそ、私は確信しています。
その一瞬の悲しい事故が起きないように工夫することは、絶対に必要だと。
3. なぜ「転ぶだけ」で命に関わるの?
高齢者が転ぶと、どうしてそこまで深刻になるのでしょうか。
- 「寝たきり」への入り口: 太ももの付け根などを骨折すると、そこから急激に体力が落ち、寝たきりになってしまうことがあります。
- それをきっかけに、もともと抱えていた未病(発病には至っていないものの、軽い症状がある状態)が表面化したり、すでにかかっていた疾病が悪化したり、新たな合併症が生まれる等により、死亡につながることがあります。
- 頭へのダメージ: 頭を強く打つことで、重い脳の損傷を負うケースもあります。
- 「動かなくなる」ことの怖さ: 一度転ぶと、「また転ぶのが怖い」という不安から動かなくなり、体全体がどんどん弱っていきます。
4. 「今まで通り」は、もう通用しない
親御さんは「自分は大丈夫」「今まで通りでいい」と言うかもしれません。しかし、体は年齢とともに少しずつ変化しています。
私たちが訪問介護の現場で学んだのは、「本人が気づいていない小さなリスクを、周囲が先回りして見つけてあげることの大切さ」です。
今日からできる、家族の安全対策
- 環境を整える: 段差に「スロープ」を置く、夜間でも足元が見えるように「センサーライト」をつける。
- 見守る: これらは「親にやらせる」ものではなく、私たちが「環境を整えて」あげることがベスト。今、ほんの少しの工夫をしておくだけで、これから先、親御さんも私たちも、余計な心配をせずに穏やかに過ごせます。
次回は、この転倒リスクを劇的に減らすための神アイテム」を具体的にご紹介します。良かったら、次も読んでみてくださいね!

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